こうした日本人の行動様式から「甘え」というキーワードを抽出したのが、亡くなった精神科医師の土居健郎さんだ。留学先の米国には訳語のない言葉。帰国後に「なぜ」を突き詰めて出版した「『甘え』の構造」は、40年近くものロングセラーになった
甘えが潤滑油になってうまくいく人間関係の例などを挙げながら、特有の文化と論じている。その後マイナスイメージでとらえられもしたが日本社会の中で「甘え」の存在は認知されたようだ
ただ事情が少し変わりつつある。本紙教育面に、ある女子学生の話が載っていた。自殺したくなるほど体調が悪いが、親にも言わない。妹が大変な時期で、自分まで心配をかけられない。これまでも親に甘えないできた、という
この話を紹介した教授が反省している。「苦しい時に助けを求め、甘えることがどれだけ大切かを伝えてこなかった」。世間で叫ばれる「自立」や「自己責任」。でもそれだけでは逃げ場がない。2年前の増補版でも土居さんが説いた「よき甘え」の勧め。今の社会への遺言と読める。
天風録 中国新聞 2009年7月7日
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