2009年07月05日

「私たちは被害者であり、加害者でもある」便利さ、豊かさの陰で・・・ 天風録 八葉蓮華

 昔の水まきホースはもろく冬にはポキポキ折れた。戦後しばらくして、丈夫で軟らかな塩化ビニールのホースが現れ、国民は飛びつく。水銀を触媒に使う塩ビ製品。日本で初めて世に出したのが、水俣病の加害企業チッソだ

 熊本県水俣市が建てた「水俣病資料館」をのぞいたことがある。一角には歴代の商品が並ぶ。塩ビ製品だけでなく、ブラウン管や液晶、化学肥料、写真フィルム…。チッソがもたらした「便利な暮らし」が心に焼き付いた

 水俣病の公式確認から半世紀余り。公募で選ばれた一つのメッセージがある。「私たちは被害者であり、加害者でもある」。無知からとはいえ隣人を「奇病」扱いした。補償金をやっかんだ。わが過ちを見つめて、責任を負おうとする一文が重い

 「私たちは」という主語は、水俣市民ばかりを指すのではないだろう。便利さ、豊かさの陰で踏み台にされてきた人から、私たちは目を背けてこなかったか。そう問い掛けられた気がする

 未認定患者を救済する法案がきのう、衆院を通った。一時金を払ったら親会社をたたみ、子会社で事業を続ける内容だ。しかし正面から謝罪されたとは受け止められない遺族や被害者も多い。「私たちは加害者」との自覚があってこそ誠意は伝わるはずなのだが。

 天風録 中国新聞 2009年7月4日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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