講演を聞いたことがある。「拘置中に年金制度が始まった。誰も教えてくれなかった。無年金になって、老い先が見えない」。真犯人が挙がらないため陰口も絶えない。「いまだに私は死刑囚」とも。顔に刻まれたしわは終始、深いままだった
17年半ぶりに釈放され、自由な身で一夜を明かした菅家利和さん(62)。きのうは寝不足の様子だった。「好きなコーヒーの飲み過ぎで…」。いたずらが見つかったような照れ笑い。そんな表情を映すテレビ画面に安(あん)堵(ど)した
しかし大変なのはこれからだろう。にこやかな顔が曇る日もあるはずだ。無罪を祈り続けてくれた両親はこの世にいない。まるで浦島太郎の社会復帰。ケータイのかけ方、電車の乗り方から「リハビリ」をしなければならない
免田さんが報道陣に答えていた。「菅家さんとは通じ合える。同じ体験者だから」。心なしか目に力強さを感じた。そう何人も出ては困るが、二人はまたとない「同志」。顔がこわばりそうになった時、ケータイが二人をつなぐかもしれない。
天風録 中国新聞 2009年6月6日
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