2009年06月08日

「レトロ地図」過去をふりかえることによって希望を明日へかけたい・・・ 天風録 八葉蓮華

 広島駅前に「ピーター」があり、皆実町は「セントラル」、己斐には「衆楽」も。広島市内のあちこちに、これほど劇場や映画館があったのか。60年ぶりによみがえった色刷りの市街地図を眺めながら驚いた

 ほぼ新聞2ページ大の地図は、旧町名と番地入り。当時、霞町に移っていた県庁などの公共施設に加え、商店や町工場も記されている。裏面には約300の広告。地形の大まかさは否めないが、復興に向けて歩み始めた街の息遣いは伝わってくる

 先月下旬、復刻出版した南区の古書店には、買いに来る人が引きも切らないという。日ごろ口数の少ないお年寄りが、地図を広げて何時間もしゃべった。そんな後日談も届いた。懐かしい店や会社の名前を見つければ、誰しも思い出があふれるに違いない

 全国的にも、レトロ地図は静かな人気を呼んでいるようだ。戦前戦後と現在の都市地図をセットにして売り出している出版社もある。こちらはウオーキングがてら、昔の面影を探して楽しむ趣向なのだろう

 街の活気を示すバロメーターといえる店や会社。それが記された地図はさしずめ、時代を生きた人々の「証し」ともいえようか。旅する民俗学者、宮本常一にこんな言葉がある。「過去をふりかえることによって希望を明日へかけたい」

 天風録 中国新聞 2009年6月7日
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2009年06月07日

ぬれぎぬ「リハビリ」浦島太郎の社会復帰、自由な身・・・ 天風録 八葉蓮華

 解放の喜びで男性の顔はくしゃくしゃだった。「死刑台からの生還」といわれた免田栄さん(83)。強盗殺人などのぬれぎぬで、34年もの獄中生活を強いられていた。再審でやっと無罪に。あれからもう四半世紀がたつ

 講演を聞いたことがある。「拘置中に年金制度が始まった。誰も教えてくれなかった。無年金になって、老い先が見えない」。真犯人が挙がらないため陰口も絶えない。「いまだに私は死刑囚」とも。顔に刻まれたしわは終始、深いままだった

 17年半ぶりに釈放され、自由な身で一夜を明かした菅家利和さん(62)。きのうは寝不足の様子だった。「好きなコーヒーの飲み過ぎで…」。いたずらが見つかったような照れ笑い。そんな表情を映すテレビ画面に安(あん)堵(ど)した

 しかし大変なのはこれからだろう。にこやかな顔が曇る日もあるはずだ。無罪を祈り続けてくれた両親はこの世にいない。まるで浦島太郎の社会復帰。ケータイのかけ方、電車の乗り方から「リハビリ」をしなければならない

 免田さんが報道陣に答えていた。「菅家さんとは通じ合える。同じ体験者だから」。心なしか目に力強さを感じた。そう何人も出ては困るが、二人はまたとない「同志」。顔がこわばりそうになった時、ケータイが二人をつなぐかもしれない。

 天風録 中国新聞 2009年6月6日
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2009年06月06日

五穀豊穣「色の効用」赤や緑、黄色の野菜など色のある食べ物・・・ 天風録 八葉蓮華

「五」という数字には、森羅万象に通じるような不思議な感じがある。五山、五穀、五彩…。先ごろ、地域の特産品作りを目指す安芸高田市の第三セクターが製造販売に乗り出したのは「健康五色粥(かゆ)」セットだ

 緑の豆、赤い小豆、黄色いカボチャ、白い豆乳、そして黒米がそれぞれ彩りを添える粥。見た目にもおいしそうだが、古来の食養生の考え方に基づいているという。例えばカボチャなどの黄色い食材は、食欲不振や疲れ気味の人に良いとされている

 実はこの色、大相撲でもおなじみだ。黄色っぽい砂を敷きつめた土俵。つり屋根の四隅からは青、赤、白、黒の長い房が垂れている。色ごとに四季と天を守る神獣を表すという。五穀豊穣(ほうじょう)を祈る意味もあったらしい

 色や味だけではない。季節から方角、感覚、内臓やその状態に至るまで自然の根源は、すべて五つの要素から成り立つとみる。古代中国の「五行説」の考え方である。昨今、ブームになっている風水とも切っても切れない関係のようだ

 赤や緑、黄色の野菜など色のある食べ物は、現代の医学でも見直されている。老化や生活習慣病を引き起こす活性酸素を抑える働きがあることが分かってきた。色の効用をしっかり味わうためにも、五感を研ぎ澄まさなければ。

 天風録 中国新聞 2009年6月5日
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2009年06月05日

貧富の格差「面従腹背」豊かになればすべて丸く収まる・・・ 天風録 八葉蓮華

 中国に帰ったら、どんなふうに過ごすのか。そう問うと留学生は、紙片に四文字を記した。「面従腹背」。天安門事件が起きて間もないころだ。武力で封殺された学生たちの民主化の夢。やるせない表情を今でも覚えている

 事件からきょうで20年。「6・4」世代と呼ばれた学生たちは、その後のめざましい経済発展を支えた。学園紛争を経て企業社会に身を投じた日本の団塊世代とも似ている。違うのは、人々の心に深い傷を残した事件について公に語る自由がないことだ

 中国当局の公式見解は「反革命的暴乱」。鎮圧を決めケ小平は、豊かになればすべて丸く収まると考えたようだ。共産党の独裁という「木」に、市場経済という「竹」を接いでの急成長。思惑通りと言うべきか、今の若者の多くは6・4に無関心という

 その陰で、貧富の格差が深刻になってきた。今、資本主義復活を戒めてきた毛沢東の人気が上昇中という。初の国産空母の名前を募るネット投票でも1位になった。「民衆がケ小平の路線にそっぽを向き始めたことを示している」と中国生まれの評論家石平氏はみる

 毛沢東ブームは20年後に表れた新しい「面従腹背」の形だろうか。留学生は母国に帰り、それなりの地位に就いている。本音を聞いてみたい気がする。

 天風録 中国新聞 2009年6月4日
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2009年06月04日

気は優しくて力持ち、冬は必ず春になる・・・ 天風録 八葉蓮華

 小さいガラス玉を、一つ一つ針ですくう。ビーズ細工は、手先が器用で集中力が続く人でないと、うまくいかない。その世界ではよく知られ、専門誌でも紹介される作者が、身長190センチ、体重164キロというから驚く。広島市安佐北区出身の北桜関だ

 幕下でわずかな手当しかなかった10年ほど前。後に妻となる女性が、ビーズの指輪をしているのを見て思った。「自分で作って誕生プレゼントにしよう」。もともとプラモデルが趣味だったし、何より金がかからない

 気は優しくて力持ち。そんな言葉を連想させる人である。土俵では大量の塩を高くまいてファンにサービスし、花道では気さくにハイタッチに応じる。ただ優しさが裏目に出てか、本番で力が出せないこともある。番付の上がり下がりが激しく、ここ2場所は幕下に沈んでいた

 来場所から、7度目の十両への返り咲きが決まった。37歳6カ月での復帰は、戦後で2番目の年長記録だ。冬は必ず春になる、と言って励ましてくれた妻や子どものおかげで、踏ん張れたという

 「ビーズの穴に糸を通すのと、立ち合いの集中力は同じ」と北桜関。塩まきパフォーマンスとともに、星の数でファンにどこまで応えられるか。北限の桜のようなしぶとさで、もうひと花、ふた花を。

 天風録 中国新聞 2009年6月3日
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2009年06月03日

世界一の座に安住し、変化への対応に遅れたGM・・・ 天風録 八葉蓮華

 「あの車」は成功のあかしだった。ヒットを飛ばしたミュージシャンにぽんと買い与えるレコード会社。半世紀前の米国の実話をもとにした映画の名は「キャデラック・レコード」である

 長いボディーに大排気量のエンジン。尾翼を思わせる「ひれ」もついていた。ゼネラル・モーターズ(GM)の看板車は、いかにもビッグ。ハリウッド映画にもたびたび登場し、世界中の人たちが「富の象徴」としてあこがれた

 力道山に石原裕次郎…。日本でも、スターが手に入れるたびに話題となった。子どものころ、裕福な友人の家に1台あったのを思い出す。もちろん中古だったと思うが、近寄ろうとしただけでしかられた

 そんな時代はすっかり遠くなった。業界の頂点に君臨したGMの経営が行き詰まり、国有化される。この車を専用車に使うオバマ大統領は、優良ブランドとして残すようだ。政権の看板はエコカーだけに、燃費の悪さという「伝統」も少しは改善されようか

 キャデラックの名は、あるフランス貴族に由来している。300年前にアメリカ建国に先だって新大陸に渡り、後に自動車の聖地となるデトロイトにとりでを築いた。世界一の座に安住し、変化への対応に遅れたGM。失われたのは、開拓と挑戦の心だったのかもしれない。

 天風録 中国新聞 2009年6月2日
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2009年06月02日

まぼろしの「邪馬台国」古代の夢を追い求めたロマン・・・ 天風録 八葉蓮華

 邪馬台国(やまたいこく)はヤ・マ・タ、その意味は入り江や湾に臨んだ畑の国―。3世紀の中国の歴史書「魏志倭人伝」に登場する国々を「音」で探り出す。故宮崎康平さんの「まぼろしの邪馬台国」がベストセラーになったのは40年前だ

 目が不自由だった宮崎さんは、妻が吹き込んだ倭人伝や古事記などのテープを暗記するほど聴いた。地名の音を手掛かりに九州各地を歩く。パズルを解くように推理を重ね、古里に近い諫早湾南岸が邪馬台国と世に問うた。「偉大な素人」の発想が、今に続くブームに火を付けた

 昨年秋には、古代の夢を追い求めた夫妻の姿が映画化された。プロの学者からは「非科学的」とあまり顧みられなかった宮崎説。手を携えて傾けた情熱の底には、権威への負けじ魂もあったのかもしれない

 いまだ邪馬台国がどこか、確定しないままだ。つい先ごろも奈良県の箸墓(はしはか)古墳の築かれた時期が、邪馬台国の女王卑弥呼(ひみこ)の死亡時期とほぼ一致したという研究発表があった。近くで出た土器のすすを最新の分析方法で調べたという。科学の力を借りて、畿内説が勢いを増すのか

 邪馬台国とされる地は、畿内や九州だけではない。吉備や出雲、果ては千葉、沖縄を挙げる説まである。結論が出ていないからこそ、かきたてられるロマンもある。

 天風録 中国新聞 2009年6月1日
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2009年06月01日

縦書きの風情を壊さないように、と念じながらの試行錯誤・・・ 天風録 八葉蓮華

 「一」もあり。「1」もあり。自在なところが日本語だ。しかし二系統の数字は、たたずまいも、においも違う。「2人で3時間」と書けばアルバイトの時給計算のようだし、喫茶店で話が弾むカップルなら「二人で三時間」と書きたいところ

 なんとなくだが、使い分けのルールがあるようだ。ビジネス文書など横書きには洋数字。伝統的な縦書きの世界なら漢数字に。小説はその代表で、村上春樹さんの最新作も「1Q84」というタイトルとうらはらに、本文はきっちりと漢数字になっている

 明治時代に創刊した本紙も、ずっと「縦書きで漢数字」を通してきた。しかし次第に数字がポイントという記事が増えてくる。読みやすさを考えて、最初はスポーツ面で洋数字を基本とし、あすからは経済面などすべての紙面に広げていく

 「二千三百四十五億円」より「2345億円」の方が目に飛び込みやすかろう。字数も減る。ただ数字が目立ち過ぎて事務文書のようなイメージになっては、との心配がなくもない

 もちろん「七五三」とか「五里霧中」とか昔ながらの言葉や表現はそのまま。しかし「三人組」や「二十日」などは悩ましい。自在な日本語を縛り過ぎてもよさが失われよう。縦書きの風情を壊さないように、と念じながらの試行錯誤である。

 天風録 中国新聞 2009年5月31日
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