2009年06月30日

自然や人の営みがつくり出した宝物を、次世代に手渡す知恵、景観か、便利さか・・・ 天風録 八葉蓮華

 正面から見ると、3千年の時を経た巨大な王の彫像。裏側に回るとコンクリートのドームに覆われており、落差に驚いた。以前、訪れたエジプト南部のアブ・シンベル神殿。舞台セットのような造りは、ナイル川沿いの遺跡を丸ごと移築したためだ

 1960年代、下流でダム建設が始まった。水没から救おうとユネスコが呼びかけ、千個に切断して移した。これをきっかけに誕生したのが世界遺産である。登録は900件近くになったが、危機にひんした遺産も少なくない

 ドイツのドレスデン・エルベ渓谷もその一つ。田園と古都の建築が調和する景観は、日本にもファンが多い。ところが先日、ユネスコは登録抹消を決めた。文化遺産では初めてである

 交通渋滞を和らげようと、エルベ川に4車線の橋が建設されているからだ。トンネルへの切り替えをユネスコ側は提案したが、負担増になるため市は譲らなかった。景観か、今暮らす人々の便利さか。そんな二者択一は悩ましい。第三の道はなかったのか

 同じような問題は私たちの身の回りにもある。自然や人の営みがつくり出した宝物を、次世代に手渡す知恵はないか。できればそのままの場所や形で。エジプトの王の彫像に、かすかに残る継ぎ目を見つけた。ほろ苦い思い出だ。

 天風録 中国新聞 2009年6月29日
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2009年06月29日

空梅雨「水のある風景」てるてる坊主を逆さにつって雨を待とうか・・・ 天風録 八葉蓮華

 街中を縫っているからこそ、味わいがあり、癒やされる気がするのだろう。福山市の道三川である。幅2メートルばかりの小川。石積みの岸辺は近くの人たちによって手入れされ、この季節は、ひっそり咲くアジサイにも心ひかれる

 初めて見た時に不思議だったのが流路である。右に左に、唐突に曲がる。途切れたかと思うと、道路をトンネルでくぐってまた現れる。どこから始まり、どこで終わるのかもよく分からない

 後になって福山城の外堀の名残と知る。古地図を広げ、歩いてみて、そうかと納得した。かつてはどぶ川。地元の人がヘドロをかき出すなど再生への取り組みを始める。市が河川公園の整備という形で支援して、今のたたずまいになったという

 韓国・浦項のまちづくりのヒントになったことはあまり知られていない。鉄の街同士の友好都市。福山に派遣された職員が「水のある風景」に目を見張った。ぜひわが街にも…。目抜き通りのまん中にせせらぎが通水したのは昨夏である

 芦田川から取水し、地下水のくみ上げで補っている。しかしこの空梅雨で、夏が心配だ。江戸時代の歴史をしのばせ、海の向こうにも縁を持つ川である。夏こそ涼しげな流れに、一息つきたい。てるてる坊主を逆さにつって雨を待とうか。

 天風録 中国新聞 2009年6月28日
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2009年06月28日

「そう遠くない日」総選挙を控えてのなりふり構わない姿・・・ 天風録 八葉蓮華

「ハイブリッド車に替えたら25万円」などと、エコカー補助やエコポイントをアピールする麻生太郎首相。定額給付金も「配ってみると評判が良かった」。口から出るのは〈自画自賛〉のオンパレードだ

 そんな調子で昨夜まで続いたのが都議選の応援行脚。自民党公認の候補予定者58人をすべて回ったという。総選挙を占うだけに力の入れようはなかなかのもの。ただ人々の関心は「都議選の前なのか、後なのか」にあるようだ

 解散のタイミングである。「そう遠くない日」と首相が発言したから党内は大騒ぎ。「今やったら負ける。これでは破れかぶれ解散じゃないか」との悲鳴も漏れるが、まさか首相が〈自暴自棄〉のはずはあるまい

 これまで「最優先する」としてきたのが景気対策だ。解散をしないための名目だったが、その言葉で〈自縄自縛〉にも。大型予算を通して、やっと伝家の宝刀を振り回せると思ったのだろうか。ただ党内にはそんな〈自作自演〉にはつきあえぬ、お引き取りを、との声もくすぶる

 解散をめぐる綱引き、あるいは内閣改造や三役交代論。このところ党から聞こえるのは小手先の話ばかりだ。総選挙を控えてのなりふり構わない姿とも映る。ただあまりに党略が過ぎると…。辞書には〈自業自得〉という言葉もある。

 天風録 中国新聞 2009年6月27日
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2009年06月27日

ひらめき「融通無碍」勝つためには、覚えるよりも忘れる努力が必要です・・・ 天風録 八葉蓮華

「勝率8割」という全盛期の勢いはない。それでも2勝3敗のカド番から連勝してしのぎ切り、タイトルを守った。もがく羽生善治名人の姿は、どこか人間くさい

 今回の挑戦者は、一手に3時間考えたこともある郷田真隆九段。持ち時間9時間をフルに使おうとする対局シーンが、テレビで中継された。沈思黙考する2人の表情を見つめていると、こちらまで息が詰まりそうだった

 天才少年と呼ばれた羽生名人も、今や40歳に手が届きそうな年齢になった。名人戦で連覇したのは1996年以来というから、随分久しい。7番勝負では、最終局までもつれ込むケースが増えている。それだけ体力も余分に消耗するようだ

 そんな真剣勝負の世界から生み出される言葉には、味がある。「勝つためには、覚えるよりも忘れる努力が必要です」。なるほど、ひらめきを呼び込むには、記憶でいっぱいだと回転の邪魔になるというわけか。棋風と同じような当意即妙の受け答えが楽しい

 そのせいか「言葉の対局」の方も増えているようだ。相手は経営コンサルタントもいれば、人工知能の科学者も。どうすれば、これほど融通無碍(むげ)になれるのか。「直感の7割は正しい」とも言う。これなら何とかなりそうだ。詰め込むのではなく、捨て去れる心境にあやかりたい。

 天風録 中国新聞 2009年6月26日
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2009年06月26日

新しいエネルギー「ピエロ」筋書きがない、ある、自由演技・・・ 天風録 八葉蓮華

 才能のある人を自陣に迎えるのはそう簡単ではない。劉備(りゅうび)が3度足を運んで、計略家の諸葛孔明を配下にしたのは「三国志」の有名なエピソードだ。そこから「三顧の礼」という言葉も生まれた

 「あなたを衆院選の候補として迎えたい」。自民党の古賀誠選対委員長が、宮崎県庁に出向いて口説いた。相手は東国原英夫知事。今の自民党にない新しいエネルギーがほしい、とも

 知事は答えた。「私を次の総裁候補として選挙を戦う覚悟がおありか」。つまり「総大将にしてくれるなら」と、のめそうにない条件を出した。古賀氏はその夜、もう一度会ったというが、さて「三顧」はあるのだろうか

 知事の人気を頼んで負け戦を立て直そう、と見え見えの思惑。知事もテレビを意識した演出を考えたに違いない。元芸人らしいギャグと受け取れば笑い話で済んだが、党内には「ばかにされた」と本気で怒る人もいて、古賀氏はピエロになってしまった

 元首相が「三顧の礼」で迎えた日本郵政の社長のクビを切るか、逆に切られるか―で見る者をどきどきさせた鳩山劇場。それに続いて、筋書きがぶっ飛んだような今回の寸劇。政治のプロセスがよく見えるのはいいのだが、ここまで「自由演技」が続いたのでは…。

 天風録 中国新聞 2009年6月25日
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2009年06月25日

鎮め守る古来の知恵「混植を実行せよ」」互いの競争でたくましい森に育つ・・・ 天風録 八葉蓮華

「チンジュノモリ」は国際学会の公用語になっている―と植物生態学者の宮脇昭さんが書いている。神が宿るとされて人の手が入っていないから、本来の植生が残っている。英語にもドイツ語にも訳しにくいという

 自然に生えて成長した木は、その地の環境に一番よくなじむ。深く根を張り、葉を広げ、地震や風水害にも耐える。木を植えるなら「鎮守の森」をお手本に。宮脇さんが長年訴え、実践してきた考え方が、国有林で初めて取り入れられた

 場所は呉市の野呂山。これまではもっぱら「経済木」のヒノキや杉が植えられていた。ところが5年前の台風で、頂上付近の30年近いヒノキが次々に倒れた。根の張りが弱かったせいだ。そこで「跡地」は本来の植生である広葉樹に、ということになった

 宮脇さんが選んだのは、カシやシイなどの照葉樹、山桜やケヤキなどの落葉樹。いわば雑木である。来月までに、2万本の苗木を交ぜて40〜50センチ間隔で植えていく。互いの競争でたくましい森に育つはずだ、という

 21年前の集中豪雨で大被害が出た広島県旧加計町。戦後、密植したヒノキが裏目に出た。地元に伝わる江戸中期の文書にはこうあったという。「広葉樹を残し、混植を実行せよ」。鎮め、守る古来の知恵を、今に生かしたい。

 天風録 中国新聞 2009年6月24日
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2009年06月24日

「慰霊の日」書けない、語れない「無言」の向こうに・・・ 天風録 八葉蓮華

 多くの人の涙を誘った映画「あゝひめゆりの塔」。沖縄戦の看護で従軍し、自決した女学生の悲劇を描いた作品だ。だが主演した吉永小百合さんは40年たった今、その過剰な演技を悔やんでいるという

 反省を胸に、取り組んでいるのは「ウミガメと少年」という戦争童話の朗読である。「鉄の暴風」と呼ばれた米軍の艦砲射撃。その最中、海亀の産んだ卵を独りぼっちの少年がかえそうとする、ほのぼのと切ない作品だ。ひめゆりのように声高に訴えるシーンなどどこにもない

 童話の挿絵が今、三次市の三良坂平和美術館に並べられている。吉永さんの思いと共鳴し合うかのように、画面のタッチは静かで柔らかい。それが逆に、見る側の想像をかき立てる

 宮崎駿監督のアニメ映画でトトロの森を描いた男鹿和雄さんの絵である。少年の隠れ家になった海辺のガマ(洞穴)の色合いには深みがある。ガマといえば、逃げ込んだ何組もの家族が近づく米兵に観念し、自決を図った。そんな悲史も思い出す

 本土防衛の「捨て石」とされた沖縄。ウミガメの童話を書いた野坂昭如さんは心情をこう思いやる。「陰で何があったか、生き残った者は口を閉ざす」。書けない、語れない「無言」の向こうに思いをはせたい。沖縄はきょう、慰霊の日。

 天風録 中国新聞 2009年6月23日
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2009年06月23日

カンガルー裁判「ビルマ」為政者の都合のいいように法律をぴょんぴょん跳び越える・・・ 天風録 八葉蓮華

「オーストリアにカンガルーはいません」。首都ウィーンなどではそんな英語のTシャツを土産に売っている。南半球のオーストラリアと似た国名。よく勘違いされるのを逆手にとった商法のようだ

 「ラ」があるとないとの違い。日本でもよく混同される。東京のオーストリア大使館は3年前に呼び掛けた。これからは「オーストリー」と呼んで、と。しかしなかなか浸透せず、あきらめたようだ

 ちょうど20年前。ビルマの軍事政権が突然、国名を「ミャンマー」に変えた。歴史的な名前を変えるぐらいの力を持っているんだぞ、とも聞こえる独裁者のようなやり方に、国際社会はまゆをひそめた

 政権が次にやったのは政敵の封じ込め。民主化運動のリーダーであるアウン・サン・スー・チーさんを、自宅に軟禁する。あからさまな選挙妨害だ。英国など多くの国が今もあえて「ビルマ」と呼ぶのは、ミャンマー政権への抗議の意味を込める

 スー・チーさんは来週、また法廷に引き出される。「カンガルー裁判」とささやかれているようだ。為政者の都合のいいように法律をぴょんぴょん跳び越えるような審理を指す英語という。国民がこんなTシャツを土産物店に並べる日はいつ来るだろうか。「ビルマにはもうカンガルーはいません」

 天風録 中国新聞 2009年6月22日
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2009年06月21日

美しい「工場萌え」その機能的な風景は、現代アートの趣さえ漂わせる・・・ 天風録 八葉蓮華

 「さっ風景」というコンビナートのマイナスイメージがここにきて変わりつつある。複雑に組み合わさったパイプラインや、巨大な丸いタンク群。そこに魅力を感じる人が増えているようだ。「工場萌(も)え」という言葉も生まれている

 見慣れた周南地域のコンビナート群を、あらためて眺めてみる。そう言われれば、むき出しの造形には構造的な美しさがある。昼間はそっけないけれど、夜は照明に映えて色っぽさを増す

 こうした風景を熱く語るブログがある。思いが込められた写真集が、書店に並ぶ。こんな動きに乗った「産業観光」も盛んになっているようだ。周南地区一帯では、夏休みに工場巡りツアーが計画されている

 「萌え」の対象は、過去の「産業遺跡」にも向かっているようだ。「軍艦島」と呼ぶ方が通りがいい長崎市の端島。35年前に閉じられた炭坑で、春に初めてツアー客が上陸した。写真で見ると極め付きの「職住一体」。その機能的な風景は、現代アートの趣さえ漂わせる

 「コンビナート」と「廃虚」。いかにも妙な取り合わせだが、共通点が案外多いことに気づく。独特の存在感がありながら、人のにおいが希薄だ。近づきがたい。というよりちょっと怖い。そしてこれまでの固定観念から離れてみれば「美しい」と。

 天風録 中国新聞 2009年6月20日
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2009年06月20日

「生きにくさ」あなたのおかげで、救われた人もたくさんいます・・・ 天風録 八葉蓮華

 自分が自分でないような。いつも人に左右されているような。そんな「生きにくさ」を抱えた人が集まる会が、広島市にある。主宰しているカウンセラーによると、メンバーの多くが共感するのが、太宰治の「人間失格」という

 周りの人たちとうまく関係がとれないために「道化」を装う男の手記の形をとる。自信がないから必しで笑顔をつくる。摩擦が怖いので頼みを断れない。周囲に合わせて「一言も本当のことを言わない子」の苦しさが、自虐的につづられる

 「会のメンバーも似ている。自信がないからつい仮面をかぶってしまう」とカウンセラー。しかし多かれ少なかれ誰も仮面を着けている。読んで、鏡を見せつけられたような気がするのはそのせいだろう

 新潮社によると、文庫版は累計630万部が売れている。夏目漱石「こころ」に次ぐロングセラーだ。「自分と同じ」と楽になったり、「自分はこれほどではない」とほっとしたり。あるいは「仮面を外してみようか」と勇気を得たり。さまざまな読者がいるに違いない

 100年前のきょう、青森県で生まれた太宰治。数々の逆説めいた文章も残している。その中の一つに「生まれて、すみません」。いえいえ、あなたが生まれたおかげで、救われた人もたくさんいます。

 天風録 中国新聞 2009年6月19日
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2009年06月19日

「国の将来」私たちが描いたのは本当にこんな色だったのか・・・ 天風録 八葉蓮華

 イランの田舎町で教師が子どもたちを励ます。「君たちは真っ白な紙だ。これから色を塗って絵を描いていくんだ」。そんな場面で始まる小説が今春、文学界新人賞を受賞した。大阪に住むイラン人女性シリン・ネザマフィさん(29)の「白い紙」である

 イラクとの戦争中の物語だ。少年は医師を目指していたが、戦況悪化で進学の夢を断ち切ってしまう。「自分が描けるのは白い紙の半分だけだ」。立ちはだかる現実に、少年の色は塗りつぶされた

 その戦争が終わって20年余り後のイラン大統領選。人々は「国の将来」を描く投票用紙を手にしていた。ひょっとしたら、この国の色が変わるのではないか。そんな予想もあったが、ふたを開けると、現職の圧勝だった

 多くの戦死者を出し、10代と20代が国民の半数を超すという。小説の少年のような若者には「変えたい」との熱気が高まっていたようだ。自由に服が着られなかったり、核開発で国際的に孤立したりするのはもうたくさんだ、と

 「私たちが描いたのは本当にこんな色だったのか」。結果を見た多くの人が抱いた自然な気持ちだろう。開票の不正を疑うデモに数十万人が参加し、死者も出た。慌てて投票の一部を再集計すると発表した政権側。結果を白紙に戻し、再選挙という手もあろうが…。

 天風録 中国新聞 2009年6月18日
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2009年06月18日

「晴れ、時々オタマジャクシ」現実のような、そうでないような・・・ 天風録 八葉蓮華

「あすの夕方、空から雨が降るみたいに魚が降ってきます」。そんな予報をする老人が、村上春樹さんの「海辺のカフカ」に登場する。小説では、翌日にばたばたとイワシが降ってきて街は大騒ぎになる

 猫と会話ができたり、奇妙な「入り口の石」を探したり。現実を超えた人が出てくる村上ワールドでは不思議でもないが、実際にオタマジャクシが降ってきた、というとびっくりする

 初報は今月はじめ、石川県七尾市から届いた。ボテボテと何か落ちるような音がして男性が外に出てみると、10メートル四方に100匹が散らばっていた。いたずらには見えなかったという。その後も県内の別の市や静岡県からも似た話が届く。騒ぎが落ち着いたと思ったら、今度は三次市で、屋根の上などから13匹見つかった

 竜巻のせい? いや、そんな気象ではなかったから、鳥が落としたのでは? 謎は深まるばかり。これまで気づかれなかった現象が、ニュースになると同時に、ここでもここでもと報じられるのはよくあることだが…

 現実のような、そうでないような。物語の世界では「晴れ、時々オタマジャクシ」といった予報も楽しい。ただ、この空梅雨である。農家の人たちが切実に欲しいのは「あすは久しぶりの雨でしょう」という現実的な予報だろう。

 天風録 中国新聞 2009年6月17日
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2009年06月17日

休日の「1000円高速」片道1600円の呉・松山フェリー・・・ 天風録 八葉蓮華

 本州と四国の間には「宇高」と並んでもう一つの国鉄連絡船があった。仁方港(呉市)と堀江港(松山市)を結び、終戦の翌年から36年間にわたって運航したという

 今の「呉・松山フェリー」は、その後継ともいえる。梅雨晴れの日、久しぶりに乗ってみた。阿賀港(呉市)から2時間足らず。堀江港に着くと、乗り場近くにひっそりとたたずむ石碑を見つけた。「仁堀航路跡」。埋もれた歴史に出合ったような気がした

 戦後、松山周辺から多くの人が呉に向かったという。高度成長の時代、対岸は造船景気にわいていた。船は就職の、進学の夢も運んでいたに違いない。合わせて60年以上の航路は今月いっぱいで姿を消す。引き金になったのは、休日の「1000円高速」である

 フロアでは子どもがはしゃいでいる。横になる人も、静かに本を広げる人も。呉に嫁いだ娘や孫を訪ねたおばあさんもいた。片道1600円の旅客運賃で行き来できる航路の生活感は、行きも帰りも同じだった

 急ぐ人、時間のある人。お金のある人、節約する人。陸、海、空路は時代と需要が変化する中で、微妙なバランスを保ってきた。そこに思い付きのような「国策」である。「来月から、あんたはどうする」。フェリーの中で交わされる会話を、政治家や官僚に聞かせたい。

 天風録 中国新聞 2009年6月16日
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2009年06月15日

W杯の夢の舞台「世界を驚かす覚悟がある」世界の度肝を抜くぞ・・・ 天風録 八葉蓮華

 見延典子さんが小説「頼山陽」で描いたのは、その「有言実行」ぶりだった。「わしは、一枚書いて家一軒建つほどの書家になる」。長じては実際に、揮毫(きごう)の注文があちこちから来るほどの能書家になったのは、知られる通り

 もちろん当時の徳目は「不言実行」。黙々とわが信じる道を行く。ああする、こうするなどと大風呂敷を広げないのがよしとされた。その時代を背景にしたからこそ、山陽のキャラが立ったのだろう

 時は移り、今は「有言実行」がもてはやされているようだ。やるぞと宣言し、自分を追い込む。周囲に触れ回った手前、こっそりとはやめられない。禁煙にもダイエットにも使えそうだ。広辞苑の最新版にも、新語として採用された

 サッカー日本代表のあれは有言、不言のどちらだったのだろう。Tシャツにプリントされた「世界を驚かす覚悟がある」。目標というにはあやふやだし、日本語だから世界に向けたメッセージとも思えない。としたら「半言」?

 見延さんは、山陽にこう語らせている。「人生とは夢を実現する舞台じゃ」。W杯の夢の舞台まで、残り1年を切った。値千金のゴールは家1軒どころではなかろう。山陽の向こう意気に倣って「世界の度肝を抜くぞ」くらいのはったりを聞いてみたい。

 天風録 中国新聞 2009年6月14日
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2009年06月14日

「落としどころ」解散という宝刀が抜かれる日が近い・・・ 天風録 八葉蓮華

 組織の中ではなかなか思ったことが言えない。だからドラマなどでこんなせりふを聞いたら、スカッとする。「汚れたことをする人間は許せない」「正しいことが通用しなければ去るべきだ」

 芝居がかったせりふを本当に吐いて、鳩山邦夫総務相が辞表を出した。「かんぽの宿」の譲渡は出来レースで不正義。だから日本郵政社長の続投は認めない。そう突っ張り続けてきたが、とうとう耐えきれなくなったようだ

 麻生太郎首相が示したという「落としどころ」をバラしている。社長が総務相に謝罪するということでどうか、と。しかしわびを入れる相手は国民のはずで、これは誰が見ても筋違い。それをけっての辞任だけに留飲を下げた人もいるだろう

 「泣いて馬謖(ばしょく)を斬(き)る」という。いくらかわいがっている腹心でも、言うことに背いたら処断すること。中国「三国志」の故事に由来する。首相は、従わなかった盟友に刀を振るったわけではないが、最後には追い込んで、詰め腹を切らせた

 その経過もまた、大向こう受けする言い回しと相まって、判官びいきの桟敷の客に訴えかける。ただ、かっこよすぎるせりふには少し意地悪になってみたくなるのも人情だ。解散という「宝刀」が抜かれる日が近いからこそ、せりふの裏にも目を凝らしたい。

 天風録 中国新聞 2009年6月13日
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2009年06月13日

日本列島は雨の季節「入梅」雲の垂れ込める空が、いつまで・・・ 天風録 八葉蓮華

 暦の上では11日ごろが「入梅」。農家にとって重要な田植えの日取りを決める目安として、設けられた。暦に合わせるかのようにきのう、東北北部が梅雨入りし、日本列島は雨の季節にどっぷりとつかった

 もっとも、9日に梅雨入りした中国地方は早くも「中休み」で、晴れ間が広がった。雨に似合う花は何といってもアジサイだ。庭の隅でしっとりと輝いていたのが、陽光を浴びると途端にしおれたようになった。その極端さがこの花らしい

 梅雨というと、じめじめとした陰気な季節を思い浮かべる人が多いだろう。だが、木々の青葉を洗い、田畑を潤す恵みの雨でもある。心が落ち着くのか、雨好きの人も結構いる。作家の江國香織さんは「雨が好きで、雨が降ると雨を見る。雨の音をきいて、雨の匂(にお)いをかぐ」とエッセーに書いている

 予報によると、向こう1カ月の降雨量は平年並みか、やや少なめという。西日本は5月の記録的な少雨で、田植えのできない農家が相次いだ。被害の出るような集中豪雨は困るが、適度な雨を祈るばかりである

 政界天気図の方は、かなり前からぐずついているようだ。間近に迫った解散・総選挙をめぐって、与野党がにらみあっている。どんよりとした雲の垂れ込める空が、いつまで続くのやら。

 天風録 中国新聞 2009年6月12日
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2009年06月12日

落としどころ「オトナ語」摩擦を最小限にし、着地点を探っていく知恵・・・ 天風録 八葉蓮華

「僕的にはOKなんですけど」とやんわり断ったり、「…という理解です」とさりげなくこちらの主張を通そうとしたり。お互いがぶつかり合わないような言い回しが、日本の社会では好まれる

 そうした決まり文句を集めて、コピーライターの糸井重里さんがオトナ語と名付けている。ことを荒立てないことによって摩擦を最小限にし、着地点を探っていく知恵。オトナ語がもてはやされる世界の一つは政界に違いない。と思っていたら…

 「落としどころ」という言葉は好きじゃない。そう言って鳩山邦夫総務相が一歩も譲らない。日本郵政の社長の続投問題だ。政界の住人らしからぬ変人ぶりに、与党内がもめている。対立が長引くにつれ、「オトナになれよ」という声まで聞こえてくる

 「ひとつ、そういうことで」と財務相らの「預かり」にしておけば、「じゃあ、その線で」と言えるようなものが出てくるはず。麻生太郎首相はそう踏んでいたようだが、思いがけない展開になった

 落としどころも腹芸もなし、あるのは敵か味方か。そんな変人も、かつていた。今回の騒動、背景にはその人の影もちらちらしている。日本郵政の株主総会は29日。「寝かせておく」という手法もないではないが、熟した答えが出てくるかどうか。

 天風録 中国新聞 2009年6月11日
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2009年06月11日

人々の心を揺さぶる「音」母が見いだし、本人が開花させた個性・・・ 天風録 八葉蓮華

 話し声や木々のそよぎ、電車の音まで。それが楽譜になって聞こえる。音に対して驚くほど敏感な人たちがいることが、最相葉月著「絶対音感」で紹介されている

 音楽の世界で仕事をするには大きな強みである。一方でBGMが2曲同時に聞こえると顔がゆがむほど苦しかったり、電話の着信音に耐えられなかったりするとも。日常の生活では、けっこう不都合もありそうだ

 わが子が音に敏感過ぎたら、親は大変だろう。その子は、洗濯機を回すと火がついたように泣きわめき、外出先のちょっとした音にも泣きだした。しかも生まれた時から目が見えない。母は日記に「つらい」「死にたい」とつづった

 米バン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)だ。母いつ子さん(49)は、前向きになれたのは一つの発見があったから、と書いている。生後8カ月、ある演奏家のピアノ曲CDをかけると、にこにこ手足を動かし、別の人のでは不機嫌に。この子の耳は聞き分けるんだ…

 さらに背中を押されたのは、ある盲人の言葉だった。「見えない世界に生きる人には、その世界観がある。臆(おく)せずに個性を伸ばしなさい」。母が見いだし、本人が開花させた個性。見えないからこそ紡げる音が、人々の心を揺さぶるのだろう。

 天風録 中国新聞 2009年6月10日
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2009年06月10日

「社会の変調」先の希望が見えにくい「ゆがみ」が影を落とす・・・ 天風録 八葉蓮華

「おなかを引っ込めて体でCカーブを描いて」。インストラクターの声が響く。座った姿勢からの動きは緩やかだが、やってみると結構きつい。ピラティスという最近人気の健康法である

 深く息を吸ったり吐いたりしながら、体の深層にある筋肉を鍛錬。無意識のうちに癖になっている悪い姿勢を直し、体の幹の部分を内側から整える。英国の病院で1920年代、第1次大戦の負傷兵のリハビリを目的にドイツ人のジョセフ・ピラティス氏が考案したという

 腰痛などを防ぐだけでなく、内臓の代謝を促す働きもあるとされる。大戦後に流行し多数の犠牲者が出たインフルエンザにも、ピラティスをしていた人の被害は少なかったという。そんな「伝説」も人気の支えのようだ

 体の痛みと同じように、事件が起きて初めて気付く社会の変調もある。1年前の東京・秋葉原の無差別殺傷がそうだった。先の希望が見えにくい「ゆがみ」が影を落としていた。その後も、世界的な金融危機に伴う景気後退で、雇用不安などが続く

 東京市場の平均株価が1万円台に近づき、景気回復の兆しもないわけではない。「経済対策の効果だ」との見方もある。ただ、体幹部が整ってすっきりした感じには程遠い。「深層筋」はどうなっているのだろう。

 天風録 中国新聞 2009年6月9日
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2009年06月09日

協調性が尊ばれる日本は「エゴイスト」には息苦しい・・・ 天風録 八葉蓮華

 組織の中での協調性が尊ばれる日本は「エゴイスト」には息苦しいようだ。生息域の一つはスポーツ界だろう。結果さえ出れば、一匹おおかみも大目に見られる。野球では投手が「オレ流」の権化だ

 速球で鳴らした元広島の左腕川口和久さんはかつて、こう言った。「三振こそ投手の華」。バックを信頼して打たせて取るのではなく、一人で勝負する。「技巧に走れば僕が僕でなくなる」と美学を押し通した

 「フォワード(FW)はエゴイストたれ」。日本サッカー協会名誉副会長の釜本邦茂さんの口癖だ。メキシコ五輪で得点王に輝いた名ストライカー。FWは点を取ってなんぼ、シュートだけ考えろ。「決定力不足」と言われ続けの後輩に歯ぎしりしてきた

 釜本さんも「タシケントの一戦」を見て、ひと安心だろうか。日本代表に現れた新星FW岡崎慎司選手。「一生ダイビングヘッド」とW杯切符をつかむ決勝点も頭で奪った。これで今年は八つの国際試合で7得点。「ゴールのにおい」がぷんぷんしている

 全員で攻め、全員で守る。日本サッカーも組織力がベースらしい。FWでもラストパスを出す脇役にも回れば、危うい時には自陣にもとって返す。「気配りもできるエゴイスト」。岡崎選手は新たな「オレ流」に挑もうとしている。

 天風録 中国新聞 2009年6月8日
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