1960年代、下流でダム建設が始まった。水没から救おうとユネスコが呼びかけ、千個に切断して移した。これをきっかけに誕生したのが世界遺産である。登録は900件近くになったが、危機にひんした遺産も少なくない
ドイツのドレスデン・エルベ渓谷もその一つ。田園と古都の建築が調和する景観は、日本にもファンが多い。ところが先日、ユネスコは登録抹消を決めた。文化遺産では初めてである
交通渋滞を和らげようと、エルベ川に4車線の橋が建設されているからだ。トンネルへの切り替えをユネスコ側は提案したが、負担増になるため市は譲らなかった。景観か、今暮らす人々の便利さか。そんな二者択一は悩ましい。第三の道はなかったのか
同じような問題は私たちの身の回りにもある。自然や人の営みがつくり出した宝物を、次世代に手渡す知恵はないか。できればそのままの場所や形で。エジプトの王の彫像に、かすかに残る継ぎ目を見つけた。ほろ苦い思い出だ。
天風録 中国新聞 2009年6月29日
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