2009年04月30日

集団感染のおそれ「変異」の術で生き延びていくインフルエンザウイルス・・・ 天風録 八葉蓮華

 江戸火消しの半鐘の打ち方には決まりがあった。火元が遠い時は、間合いを置いてジャーン。いざ出動となるとジャーンジャーンの二打を繰り返す。火が近くなるとジャンジャンジャンと連打する

 メキシコで発生した豚インフルエンザについて世界保健機関が「フェーズ」と呼ばれる警戒水準を「3」から「4」に引き上げた。ウイルスが人から人へうつるようになり「地域レベルで集団感染のおそれがある」との警鐘だ

 ジャンジャンジャン。遠くと思っていた災いが、あっという間に近づいてきそうな勢いになった。政府は「水際作戦」で、空港での入国審査や検疫でのチェックを強めている。感染防止マスクの係官がものものしい

 姿をころころと変える「変異」の術で生き延びていくインフルエンザウイルス。時に強毒で人間を襲う。九十年前のスペイン風邪では四千万人を死亡させた。時間が経過すると、毒性が弱まって人とウイルスの折り合いもつくようになるが、それまでにいかに犠牲を抑えるか

 ウイルスの速攻に対して、人間側は今のところ押され気味。猛火がすぐそこに迫って鐘の中を激しく乱打する「5」の事態になっては大変だ。各国がスクラムを組んでウイルスを抑え「ジャン、ジャン」という鎮火の報を待ちたい。

 天風録 中国新聞 2009年4月29日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月29日

「アイヌは先住民族」足元の明るいうちに帰るんです・・・ 天風録 八葉蓮華

 丁寧に言ったつもりだった。「アイヌの人は…」と。途端に講師にさえぎられた。「その言い方は変です。アイヌという言葉の意味をご存じですか」。学生時代に参加した「異文化セミナー」でのことだ

 アイヌそのものが人間という意味だ、と教えられた。かつては日本列島の広い範囲に住み、「能登」や出雲市の「十六島(うっぷるい)」などもアイヌ語に由来する、という説を聞く。先住民に対する無知を恥じた

 ほぼ半世紀ぶりに「北海道アイヌ協会」という名前がよみがえった。それまでの看板は「ウタリ(同胞)協会」だった。アイヌと言えば差別される、と隠そうとする人も少なくなかったからという

 やっと元に戻すことができたのは「アイヌは先住民族」と認めた昨年の国会決議が大きい。同胞よ、そろそろ民族の名を堂々と名乗ろうじゃないか。日本は多民族社会だということを訴えようじゃないか。そんな叫びが聞こえてくるようだ

 決議への流れをつくったアイヌ初の国会議員、故萱野茂さんは一期で引退した。「狩猟民族は足元の明るいうちに帰るんです」。深追いし過ぎると帰り道を誤りかねない、という先祖の経験に根差した教えだという。農耕文化の中に思わぬ発想を持ち込んでくれる。そこに異文化のありがたさを見たい。

 天風録 中国新聞 2009年4月28日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月28日

途中の駅で気ままに下車したり、別の列車に乗り換えたりする醍醐味・・・ 天風録 八葉蓮華

 東京で暮らした大学生のころ、鈍行列車を乗り継いで実家との間を行き来したことがある。金はなかったが、時間だけはたっぷりあった。そんな旅の道連れが、一冊の時刻表だった

 三十年余りたった今、鈍行で旅するとしたらと最近号を繰ってみた。朝六時前に広島をたち、九回の乗り換えで夜九時に東京に着くと知った。岡山での待ち時間にコーヒー店に立ち寄り、昼は米原の近江牛弁当、夕食には熱海の小アジ押しずしもいいか…。駅弁案内も楽しい

 数々の鉄道紀行を残した宮脇俊三さんは「時刻表にも愛読者がいる」と書いている。自身も新しい号が発売された夜は、何時間も読みふけったそうだ。全国の駅と細かい数字が並ぶ行間に、どんなドラマを重ねたのだろう

 一九二五年に創刊された「JTB時刻表」が五月号で通算千号になったという。最盛期には二百万部に達した発行部数も、このところは約十五万部がやっと。パソコンや携帯サイトで時刻を調べる人が増えたことも響いているらしい

 駅名と日時を打てば、即座に正しい答えが出るネット検索は、確かに便利だ。しかし時刻表を携えて、途中の駅で気ままに下車したり、別の列車に乗り換えたりする醍醐味(だいごみ)は格別だろう。人生という旅もまた、そんなものではあるまいか。

 天風録 中国新聞 2009年4月27日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月27日

残された者にとっては、あの日から四年たっても、時が止まったまま・・・ 天風録 八葉蓮華

「息子へ」と呼び掛けた父は、しばらく声が出なかった。何度も言葉を詰まらせた。映像で見た尼崎JR脱線事故の慰霊式。あの日から四年たっても、時が止まったままの遺族も多いに違いない

 兵庫県の石井房江さん(58)も、夫利信さんの死が信じられなかった。朝、元気に仕事場に出かけたのに…。来る日も来る日も、連絡があるだろうと待っていた。自分だけがおいしい物を食べると、うしろめたさを抱いた

 今、気持ちが変わりつつある。残してくれた絵手紙をよすがとして。利信さんは画廊の営業で、広島など中国地方にたびたび長期出張していた。土地土地で目に留まる風景をはがきに描いて、妻や寝たきりの母に送っていた。積もり積もって千五百通にも

 その一部が、広島県熊野町の筆の里工房できょうまで展示されている。「太田川です。川の青が実にきれいでした」「ここからみえる夕日はそこぬけのむらさき色」。淡いタッチの絵に、短い文が書き加えられる

 房江さんは最近、夫に「返事」を出した。愛犬の絵に「お父さんありがとうと楽しく暮らしています」との言葉を添えて。故人のちょっとした心遣いや、何げない行為。残された者にとっては、深い悲しみの沼からはい出るための大きな手がかりとなるのだろう。

 天風録 中国新聞 2009年4月26日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月26日

「宝探し」地元の価値にまだ気づいていない・・・ 天風録 八葉蓮華

 世界遺産の熊野古道と聞くと、どんなにすごい場所だろうか、と思う。「いや、山の中で人口の半分は六十五歳を超えてます。限界集落といってもいい」。尾道市での「しまなみ十年」シンポで、熊野から招かれた谷上嘉一さん(67)が言った

 どこにでもあるような山村。地元の人もそう思っていた。しかし村を流れる熊野川に目をやると―。古道に続く「川の参詣道」であり、三枚の帆をかけた川舟の美しさも格別だった。その歴史は平安末期の熊野水軍にさかのぼる

 すばらしいものが埋もれているじゃないかと感じた谷上さん。定年で村に帰ってから趣味を生かした舟大工の道に入る。合わせて、変哲もないように見える村の「宝探し」を始めた。世界遺産となって脚光を浴びたのは、その後のことである

 山里住まいからすれば、瀬戸の穏やかな海、のびやかな島影、そのすべてが素晴らしいという。なるほど、見慣れた日常の風景もそういうふうに感じられるのか。「地元の価値にまだ気づいていないのではないですか」と問い掛けられたような気がした

 幸せの青い鳥を求めて歩いたら、すぐ近くにいた、という童話を思い出す。遠くにしかないと思っていたものも、探しようによっては…。人生の「宝」もまた、そうなのかもしれない。

 天風録 中国新聞 2009年4月25日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 16:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月25日

泥酔「何をしてもいいような気分」酒にのまれる自分の弱さ・・・ 天風録 八葉蓮華

 一昔前、文士といわれる人たちは随分、深酒をしたようだ。「酔えば、泥酔に至るまで飲まずにいられなくなる」という獅子文六さんが、酔って屋根に登った時の心境を書いている

 月明かりの下、すぐそこに見える隣の屋根。これなら難なく飛び移れるぞ。「泥酔は、そういう確信を持たしてくれる」。助かったのは友人が引き留めてくれたからだ。気が大きくなり、何をしてもいいような気分になる。深酒のなせるわざらしい

 人気グループSMAPの草なぎ剛容疑者がつかまった。深夜の公園で裸になり、大声を出していたという。逮捕から五時間たっても呼気一リットル中に〇・八ミリグラムのアルコール分が出たというから相当な大トラぶりである

 中性的で清潔。「いい人」の印象が強い。気弱で優しい役回りが多く、はやり言葉で言えば「草食系男子」。時代が求めているようなキャラクターだ。よほどハイテンションになっていたのか、それとも自らのイメージからひととき、逃れたかったか

 前財務相のように国益にかかわる不始末ではない。しかしファンの夢を傷つけた。文六さんは泥酔の末に、酒にのまれる自分の弱さを知り「傲慢(ごうまん)の鼻」を折ったという。正気に戻った人気者にもきっと「これからは」と期するところがあると信じたい。

 天風録 中国新聞 2009年4月24日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月24日

「子にならせたい職業」地盤、看板、お金を継がないのはもったいない・・・ 天風録 八葉蓮華

 男の子ならスポーツ選手。女の子ならパンや洋菓子の職人。これが子どもの「なりたい職業」の一番手と聞けば、いかにも、とほほ笑む人も多かろう。では保護者の「子にならせたい職業」はというと…

 手堅さで選べば、男の子は公務員、女の子は看護師といったところだろうか。実際、ランドセル素材メーカーのクラレが新一年生の保護者に聞いたアンケートでは、毎年この二つが不動の一位だった

 異変は、今年起きた。親子の「ならせたい」と「なりたい」が、初めて一致したのである。世の中がどう転ぶか分からない。胸を張って語れる成功モデルも見つからない。それなら子の夢に寄り添ってみようか。そんな親御さんが増えたのかもしれない

 同じアンケートを政治家にしたら、と想像してみる。いや、するまでもなかろうか。二世や三世議員は衆院で四人に一人という数字もあるのだから。地盤、看板、カバン(資金)の「三バン」を継がないのはもったいない?

 クラレ創業者の大原孫三郎氏は「ああしろ、こうしろという親の言い付けを守っていては駄目」が口癖だったという。解散風にも誘われて起きている世襲制限論。「なりたい」でも「ならせたい」でもない。要は、国民に「なってほしい」との声があるかどうかだ。

 天風録 中国新聞 2009年4月23日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月23日

「緑ブーム」地球温暖化対策で景気浮揚、やや心もとない・・・ 天風録 八葉蓮華

 絵本「葉っぱのフレディ」の主人公は、大木の太い枝に生まれた。やがて周りに一つとして同じ葉っぱがないことに気付く。数知れぬ友だちと春風に踊り、日光を浴びながら大きくなる

 日々、鮮やかさを増す新緑も無数の葉っぱの集まりだ。よく見ると、一枚一枚が互いに陰にならないよう実にうまく並んでいる。光を効率よく受ける設計図があるかのようだ。動くことができない植物の生き残りの戦略だろう

 政治や産業界も今、にわかに緑ブームである。地球温暖化対策で景気浮揚を―。日本版グリーン・ニューディールが鳴り物入りで叫ばれる。その一方で、省エネ大賞の冷蔵庫の不当表示が明るみに。こちらの戦略はどこまで地に足が着いているか、やや心もとない

 柱と頼むのは、葉っぱならぬソーラーパネルで日光を受け止める太陽光発電だ。三年前に打ち切った補助制度を国はあっさりと復活。今度は二〇二〇年までに発電量を一挙に二十倍にという力の入れよう

 気がかりが一つ。屋根を覆うパネルはいずれ取り換え時期を迎えよう。将来出てくるかもしれない、大量の粗大ごみへの確かな備えはまだ見えない。絵本では、冬が近づくとフレディたちは枯れ落ちて眠りにつく。やがて土に溶け込み、再び木を育てる力になった。

 天風録 中国新聞 2009年4月22日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 01:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月22日

なぜ東京なのか「核兵器廃絶」被爆地へ・・・ 天風録 八葉蓮華

 英国のブックメーカー(賭け屋)によれば、本命が米国のシカゴで、ブラジルのリオデジャネイロ、東京、スペインのマドリードの順番という。二〇一六年の夏季五輪開催を目指す招致レースである

 ただ、なかなか事前の予想通りにはならない。一二年開催の場合は、掛け率で本命だったパリがロンドンに敗れている。十月二日の国際オリンピック委員会(IOC)総会まで、激しい争いが続く

 鍵を握るのはIOC評価委の現地調査だ。千分の一に再現した都心の巨大ジオラマなど、巨額の費用をかけた東京の招致活動が目を引いた。四日間の視察を終えたムータワキル委員長は「コンセプトに感銘を受けた」と、まずは及第点を出した形である

 だが、これまでの五輪招致には苦い思い出が付きまとう。一九八八年大会は名古屋が土壇場でソウルに逆転負け、〇八年大会は大阪が最下位で落選した。東京の弱点は四都市で一番低い地元支持率だ。戦後の復興を掲げた四十五年前の東京五輪に対し、二度目の今回は「なぜ東京なのか」の理念が希薄に見える

 招致活動といえば、注目されているのがオバマ米大統領の被爆地への訪問要請だ。かすかな可能性かもしれないが広島、長崎は期待をかける。こちらには「核兵器廃絶」という確かな理念がある。

 天風録 中国新聞 2009年4月21日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月21日

「恥」心に耳を押し当てよ 聞くに堪えないことばかり・・・ 天風録 八葉蓮華

 売り手よし、買い手よし、世間よし。近江商人の「三方よし」は社会貢献の原点だ。そんな宣言を関西経済同友会が二年前に出している。上方商家の家訓という四字熟語も並ぶ。「陰徳善事」。貧者救済や学校への寄付など公益を人知れず施すことだ

 その陰徳もどこへやら。日本漢字能力検定協会(京都市)の公益法人らしからぬ荒稼ぎや蓄財が発覚して三カ月。ファミリー企業との不透明な取引も浮かび、漢検商法に検察のメスが入ろうとしている

 創業者の前理事長は、先週やっと記者会見に応じた。「頭を下げさせられるから嫌だ」。そんなふうに渋っていたらしい。頭の低さで商機を広げてきたはずの上方商人とも思えない

 脱サラ起業で始めた文化教室やスーパーなどの複合経営が振るわなかった。事業のヒントを探して教員の間を回ったころ、どんな意見にも耳を傾けていたことだろう。そして漢検という宝の山を掘り当てた。京都・清水寺での「今年の漢字」は今や年末の風物詩だ

 「今の心境を漢字一字で…」と求める報道陣に、前理事長は首をひねるばかり。ならば「恥」を進呈しよう。詩人の吉野弘に同じ題の一編がある。「心に耳を押し当てよ/聞くに堪えないことばかり」。欲と金にまみれて「世間よし」が泣いている。

 天風録 中国新聞 2009年4月20日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月20日

五十歳から勉強「伊能大図」日本の端から端まで歩いて測量をした伊能忠敬・・・ 天風録 八葉蓮華

 すね周りの筋肉が痛い。春からの東京暮らしで、毎日地下鉄の階段を上り下りしているからだ。ラッシュ時には速足の人波にのまれて歩くピッチが上がり、息も切れたりする

 やわな身を戒めるようなイベントを訪れた。二百十四枚に及ぶ「伊能大図」の展示である。江戸後期、日本の端から端まで歩いて測量をした伊能忠敬。その地図が実物大のパネルになって、旧居があった深川近くの体育館の広い床を埋め尽くしている

 縦横が三十五メートルにも達し、中国地方だけで十畳分は超える。靴を脱いで上を歩くと、ちょっとした旅気分。広島市近辺では「国泰寺」「井口」と、なじみの地名が目に入る。曲がりくねった海岸線や小さな離島の周囲にも、足跡を示す赤線が引かれる。忠敬のけた外れの行動力に驚く

 幼いころから天文に関心を抱いていた。五十歳まで米取引などの家業に精出した後、さっさと隠居。勉強のために今の千葉県香取市から江戸に出る。道楽とは違う向学心に、教える側も本気になった

 幕府の許可を得て、十七年の旅の第一歩を深川にしるしたのは五十五歳の時である。「第二の人生の大先達から学びたい」と開催した日本ウオーキング協会。強い意志と健脚の証しを前にすると、とても筋肉痛をぼやいてはいられない。

 天風録 中国新聞 2009年4月19日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月19日

3085安打「広角打法」苦しいことばかり頭に浮かんでくる・・・ 天風録 八葉蓮華

 自分が打ち立てた大記録に後輩がひたひたと迫ってくる時、どんな気持ちがするのだろう。その瞬間は、やはりこの目で確認したいのが、人情かもしれない。巨人などで活躍した張本勲さんの姿が、米シアトルの球場にあった

 3085安打という日本プロ野球記録を達成した人である。引退した一九八一年の新聞で王貞治さんや野村克也さんが「誰にも破れないだろう」と語っているほどの数字だ

 その目の前で快音を残したイチロー選手。日米通算の安打数でおとといタイに並び、きのう抜き去った。「病み上がりでどうかと思ったが、さすが。大あっぱれ」。そう語った張本さんのスタンドでの表情は、淡々としていた

 四歳の時、やけどで右手の二本の指がくっついた。五歳の時には原爆に遭う。家も貧しかった。野球を目指したのは、プロ選手が宿舎の食堂でビフテキを食べているのを見たからだ。腹いっぱい食べたい、親にも楽をさせてやりたい…

 不自由な指を特注のグラブで補う。握力の弱さを克服するために「広角打法」を編み出す。「苦しいことばかり頭に浮かんでくる」と引退会見で答えてから約三十年たつ。育った環境は大きく違うが、努力という点では共通している二人。張本さんの胸に去来するものを思う。

天風録 中国新聞 2009年4月18日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 01:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月18日

「遺族には時効はない」そんな思いを裏切るような“うそ”節操がない・・・ 天風録 八葉蓮華

 野呂山の中腹にある墓地からは、安芸灘に浮かぶ島々が見渡せる。二十二年前、朝日新聞襲撃事件で凶弾に倒れた小尻知博さんが眠っている。山に海が迫る呉市川尻町。誰からも愛されたという記者の古里である

 命日を前に、父の信克さんを訪ねたことがある。有力な手掛かりがない中、おそるおそる切り出す質問。予想以上に誠実に答えてもらった。どの記者が行っても親切に応じ、墓に一緒に登る労もいとわなかった

 「息子もあちこち取材先で世話になったのだから、協力するのは務め」。わが子が身を投じたジャーナリズムへの信頼だろうか。胸が詰まった。ところが、そんな父の思いを裏切るような「誤報」が生まれた

 事件の実行犯と名乗る男性の手記を連載した週刊新潮。米大使館職員が指示したとするスパイ小説もどきの内容だった。「私は朝日新聞『阪神支局』を襲撃した!」。ショッキングな大見出しは遺族の心をかき乱したことだろう。一転して、うそだったと謝罪する記事は「こうしてだまされた」。あまりに節操がない

 事件から十五年を迎え、犯人の刑事責任が問えなくなった日。信克さんは「遺族には時効はない」と語った。メディアの力による真相解明への期待がこもっていた。その一言の重みを忘れたくない。

天風録 中国新聞 2009年4月17日
地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 14:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月17日

「人の心を引き立たせる」苦しくても頑張れば何とかなるかも・・・ 天風録 八葉蓮華

 疲れると甘いものが欲しくなるように、不況の時は笑いが求められるのだろうか。先月初めて開かれた沖縄国際映画祭のテーマは、ずばり「笑い」。主催した吉本興業の予想を大きく上回る約十万人が詰めかけた

 笑いは、不安や緊張で硬くなった心を解きほぐしてくれる。今またブームというチャプリンの映画にも、そんな力がある。何をやっても失敗ばかりの主人公。笑っているうち涙が出てきて教えられる。「苦しくても頑張れば何とかなるかも」

 八十年ほど前の世界大恐慌のころ封切られた「街の灯」。ホームレスの主人公が盲目の花売り娘を助けようとするが、うまくいかない。それでもあきらめず道を切り開こうとする二人のけなげさ。いつ見ても心に明かりをともしてくれる

 チャプリンは実は、持っていた株や債券を暴落の前年、すべて現金に換えていた。「失業者が街にあふれている。株は信用できない」と。温かいまなざしの奥にある時代を見通す鋭さ。数十年後の今も古びない作品を生みだせた理由だろうか

 大恐慌が世界を揺さぶっていたころ、日本を初めて訪れた。滞在中、不況を乗り切る方法を記者に聞かれてこう答えた。「人の心を引き立たせることが必要」。今日で生誕百二十年になる喜劇王の言葉をかみしめたい。

天風録 中国新聞 2009年4月16日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 10:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月16日

「生きたお金になっていない」老後に不安、老後に必要な資金・・・ 天風録 八葉蓮華

 娘夫婦に持たせたリュックには一億円の札束。八十代の女性は橋下徹知事に向かって「応援したい。福祉に使ってほしい」。大阪発のビッグな寄付のニュースは人々を驚かせた

 けたこそ違うが、似た話は近くにもあった。広島県北のまちづくりグループ「逆手塾」のメンバー宅への突然の電話は「百万円寄付したい」。灰塚ダムの湖面を三万人で囲もうという来年五月のイベント。手助けになれば、と広島市の八十代の男性からだった

 「古里のために一生懸命になっている心構えと勇気。頑張ってほしい」と男性。人生の残り時間を見つめつつ、これはと見込んだ人や肩入れできる事業に、まとまった金を使ってもらいたい。そう思う人が確実にいると感じる

 日本の個人金融資産は千五百兆円にのぼり、しかも高齢者に集中している。老後に必要な資金をはるかに超えてため込まれ、生きたお金になっていない、といわれる。そこにうまく「寄付」という回路を開くことができたら…

 幾つもの公益信託の基金を私財でつくり第一回「まちかどのフィランソロピスト賞」を得た今井保太郎さんが残した言葉がある。「人の値打ちはお金をいかに使うかで決まる」。ずっと抱え込むか。後の世代に託して、どう使われるのかを目を細めて楽しむか。

天風録 中国新聞 2009年4月15日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月15日

一年中眺められるようになった「けふはけふの道のたんぽぽさいた」・・・ 天風録 八葉蓮華

 野に咲く春の花と言えば、タンポポを思い浮かべる人も多いに違いない。「ふまれてたんぽぽ ひらいてたんぽぽ」。漂泊の俳人、種田山頭火も道すがら、いとおしく目に留めたことだろう

 一口にタンポポといっても種類がある。最近では一年中眺められるようになった。これも地球温暖化のせいかと思っていたら、真冬でも花を咲かせる外来種が幅を利かせているらしい。黄色い花の形もそっくりだが、がくのように見える部分がそり返っているのが外来種という

 その代表といえるセイヨウタンポポは明治の初め、札幌農学校の教師がサラダ用に北米から取り寄せたとの説もある。もともと日本にあった種に比べ、繁殖力は旺盛。今や在来種と混じり合った雑種も増え、各地に勢力を広げる。中国地方も例外ではない

 「異変」の陰に人間の営みがあるのだと、専門家は言う。在来種は里山を好む。開発が進んだり、都市化したりすると、なかなか育たない。取って代わるように、環境の変化に強い外来種がじわじわと増えてきた

 「けふはけふの道のたんぽぽさいた」。来る日も来る日も、ただ歩くしかなかった山頭火。タンポポは、そんな己の心を映す鏡だったかもしれない。花そのものが変わっている今だったら、どんな句になるのだろう。

天風録 中国新聞 2009年4月14日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月13日

新しい広島の「顔」天然芝のボールパーク・・・ 天風録 八葉蓮華

 男の子がガールフレンドを、父親が家族を連れて行きたくなる。そんな美しく、楽しい球場にすれば、ファンは集まってくる―。米大リーグ、ドジャースの元オーナーの言葉を思い出した

 おととい、プレーボールしたマツダスタジアム(新広島市民球場)に出掛けた。スタンドはゆったり。球場内を一回りするコンコースでは、食べ歩きもできる。「すごい」「ドキドキする」…。これがボールパークなのかと実感した人も多かろう

 前田健太投手が地元初勝利をもたらしたきのうは、初夏を思わせる日差しがさんさんと降り注いだ。青々とした天然芝のグラウンドと相まって、季節の息遣いを肌で感じる。屋根ですっぽり覆われたドーム球場では味わえない心地よさだ

 今や、米国ではボールパークが球場の主流になっていると聞く。しかも都市の景観をうまく取り入れているのも特徴という。鉄鋼業で知られるピッツバーグの球場は高層ビル群や鉄橋を借景に、歴史の町ボルチモアはレンガ造りのレトロなビルの隣にある

 あらためてスタンドの周りを眺めてみた。ぐるりを囲む緩やかな山なみ、マンションやビルを背に行き交う新幹線、銀色に輝く二葉山の仏舎利塔も間近だ。新しい広島の「顔」を訪ねて、街の風景を見るのも楽しい。

天風録 中国新聞 2009年4月12日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月12日

昔ながらの地方の鉄道の駅は、いささか色あせた・・・ 天風録 八葉蓮華

 駅は、ドラマが生まれる場所かもしれない。君が去ったホームで、落ちては解ける雪に目をやったり。引き留めるあなたを残し、列車に飛び乗ったり。人と人が別れ、つながるゆえに、駅は歌の舞台になる

 異界に通じる駅もある。映画化されて人気になった「ハリーポッター」。主人公の少年は、秘密のホームから魔法の世界に滑り込んでいった。洋の東西を問わず駅は、日常と非日常が交わる特別の場所と思われているようだ

 このところさまざまな駅が誕生している。山口県発祥ですっかりおなじみの「道の駅」。瀬戸内海には「海の駅」もある。そのせいで、というわけでもあるまいが、昔ながらの地方の鉄道の駅は、いささか色あせた気がしないでもない

 いや、駅はやりようによってはまだまだ魅力的な場になる。そうした思いを持つ官民の人たちが徳山駅の将来デッサンを描こうとしている。くたびれの見える駅舎を建て替え、周りの街もきれいにして、玄関として恥ずかしくないものにするという

 これまで駅を整備しようという話が出ては、消えていた。しかし今回は合併事業に絡んで最後のチャンスかもしれない。とりあえずはさまざまなイメージを突き合わせてみたい。どうすればドラマがあり、詩が生まれるような場になるかと。

天風録 中国新聞 2009年4月11日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月11日

「松本清張」父の郷里、矢戸はのう、ええところぞ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「矢戸はのう、ええところぞ、日野川が流れとってのう、川上から砂鉄が出る」。幼いころ手枕で繰り返し聞かされた父の郷里のたたずまい。鳥取県日南町矢戸の山河は、松本清張さんにとって幻の原風景だった

 もう一つの幻。それは軍需で商店や企業が急増していたころの広島だろう。働き口を求めて来た父は、東広島市志和から紡績工場に働きに出た母と出会った。今から百年前、ざわめく街の片隅で生まれたのが清張さんだ。写真館で撮った生後間もない写真が見つかった

 その後、一家で移住し「北九州市生まれ」とされるが、広島との縁は切れなかった。戦後の混乱期、ほうきの注文取りに小倉から夜行列車で通う。焼け跡が残る市内を歩き回った。「広島言葉も私には懐かしかった」と記す

 清張作品は、時代や運命に翻弄(ほんろう)された人々の側に寄り添う。たたら製鉄が斜陽を迎える一方で、日の出の勢いの軍都広島。そんな時代の流れに身を投じ、もがいた親への思いがあるからだろうか

 砂鉄を得るため姿を変えるほど崩された日南の山々。その土砂で累々たる棚田も築いた。「自分は努力だけはしてきた。それは努力が好きだったから」と清張さんは遺言にしたためた。中国地方の山里の営みがどこか重なっているようにも見える。

天風録 中国新聞 2009年4月10日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 10:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月10日

「心にゆとり」周りの視線にびくびくし、ハリネズミのように構えている・・・ 天風録 八葉蓮華

 明治時代の春の一日。列車の座席でこっくりこっくりと頭のかしぐ三人の日本人女性を見て、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は小川で揺れる睡蓮(すいれん)の花にたとえた。着物のたもとで寝顔を隠してうとうと。その風情を「しとやかで、美しい」と旅日記に書き留めている

 平成の春もうららかな陽気で、あちこちに居眠りの「花」が咲いている。バスや電車の座席で、公園のベンチで、教室や会議室で…。あおむけもいれば、深々と頭を下げたお辞儀スタイルも

 ところが欧米では、屋外でうとうとするなどとんでもないという。いつどこで誰が、財布を狙っているかもしれないからだ。とすれば、所構わずのこっくりは、日本の「安全」「安心」の風景ではなかろうか

 そう思っていたら、「異変」を知った。「教室で居眠りをしたことがない」。病院の思春期外来で、そんなふうに答える子どもが珍しくないらしい。目立つことをして、からかわれないか―。周りの視線にびくびくし、ハリネズミのように構えているのだという

 ひとときの居眠りに浸れる。それは、心にゆとりがあるかどうかのバロメーターでもあるのだろう。欲を言えば、人前で舟をこぐときも居ずまいを忘れない。ハーンが引かれた、そんなたしなみも心に留められたら。

天風録 中国新聞 2009年4月9日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。